iDeCoの受け取り方3つを比較【一時金・年金・併用】
iDeCoの受け取り方には「一時金」「年金」「併用」の3種類があり、どれを選ぶかで税金の仕組みが変わります。せっかくコツコツ積み立てても、受け取り方を知らないまま手続きを進めると、思っていたより税負担が重くなることもあります。この記事では、それぞれの受け取り方でかかる税金の考え方と、選び方のヒントをモデルケースとともに整理します。
この記事でわかること
- iDeCoの受け取り方3種類(一時金・年金・併用)の基本
- 一時金・年金それぞれにかかる税金の仕組みと控除額
- モデルケースで見る受け取り方の選び方と注意点
iDeCoの受け取り方は3種類「一時金」「年金」「併用」

iDeCoの年金資産は、原則60歳から受け取れます。受給を開始する時期は75歳になるまでの間で自分で選べ、受け取り方も1つに固定されているわけではありません。まずは3つの選択肢の特徴を押さえておきましょう。
一時金として一括で受け取る
受給権が発生する年齢(原則60歳)に到達したら、75歳になるまでの間にiDeCoの資産をまとめて一括で受け取れます。住宅ローンの残債返済やリフォームなど、まとまった資金が必要なタイミングに合わせやすいのが特徴です。
年金として受け取る
iDeCoを年金として受け取る場合は、5年以上20年以下の有期年金として、運営管理機関が定める方法で分割して受け取ります。金融機関によっては終身年金として受け取れる場合もあります。毎年の生活費に計画的に上乗せしたい人に向いた方法です。
一時金と年金を組み合わせて受け取る
受給権が発生する年齢に到達した時点で、資産の一部を一時金として受け取り、残りを年金として受け取る方法です。ただし、この併用方式を取り扱っていない運営管理機関もあるため、加入している金融機関で対応しているか事前に確認しておく必要があります。
なお、60歳から受け取るには、60歳になるまでのiDeCo加入期間等(通算加入者等期間)が10年以上必要です。10年に満たない場合は受給可能な年齢が段階的に繰り下げられ、60歳以降に初めてiDeCoに加入した人は、加入から5年を経過した日から受給できます。iDeCoは老後資金の柱の1つですが、公的年金の見込み額も合わせて把握しておくと、受け取り方を判断しやすくなります。ねんきん定期便の見方はこちら。
一時金で受け取る場合にかかる税金の仕組み(退職所得控除)

iDeCoを一時金として受け取ると、税制上は「退職所得」として扱われます。退職所得には大きな非課税枠である退職所得控除が使え、他の所得と合算せずに税額を計算する分離課税になります。計算式は次のとおりです。
退職所得の金額 =(収入金額 - 退職所得控除額)× 1/2
つまり、課税の対象になるのは、受取額から控除額を差し引いた差額の、さらに半分だけという仕組みです。
退職所得控除額は、iDeCoの加入期間(通算加入者等期間)を勤続年数とみなして、次の表のとおり計算します。
| 加入期間(A) | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × A(80万円に満たない場合は80万円) |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 ×(A - 20年) |
■ ここがポイント
受取額が退職所得控除の範囲内に収まれば、退職所得の金額は0円となり、所得税・住民税はかかりません。加入期間が長いほど控除額は大きくなります。
ケース1: 加入期間15年で500万円を受け取る場合
退職所得控除額は「40万円×15年=600万円」です。受取額500万円は控除額600万円の範囲内に収まるため、退職所得の金額は0円となり、税金はかかりません。
ケース2: 加入期間25年で1,500万円を受け取る場合
退職所得控除額は「800万円+70万円×(25年-20年)=1,150万円」です。受取額1,500万円から控除額1,150万円を差し引いた350万円の1/2、つまり175万円が課税対象の退職所得になります。この175万円だけを見ると所得税率5%の区分に当たるため、所得税・復興特別所得税・住民税(分離課税10%)を合わせた目安は約26万円です。実際の税額は他の所得状況や控除の適用順序によって前後するため、あくまで目安として捉え、正確な金額は税務署や税理士にご確認ください。
年金で受け取る場合にかかる税金の仕組み(公的年金等控除)

iDeCoを年金として受け取ると、税制上は「雑所得(公的年金等)」として扱われます。国民年金や厚生年金など、他の公的年金と合算した収入金額から、公的年金等控除額を差し引いて所得金額を計算します。
公的年金等控除額は年齢と年間の収入金額に応じて段階的に決まる仕組みで、公的年金等以外の所得が1,000万円以下の場合、最低控除額は65歳未満で60万円、65歳以上で110万円です(2026年7月時点の制度)。収入がこの最低ラインを超えると、収入に応じた計算式(収入金額×一定割合-一定額)で控除額を求めます。
📝 補足メモ
その年の公的年金等の収入金額が400万円以下で、かつ公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下の場合は、確定申告が不要になる制度があります(医療費控除など還付を受けるための申告は任意で可能です)。
モデルケースで見てみましょう。65歳で、iDeCoの年金80万円と公的年金150万円を受け取り、公的年金等の収入合計が230万円になったとします。65歳以上・収入330万円未満の区分に当てはまるため、雑所得の金額は「230万円-110万円=120万円」です。この120万円は他の所得と合算する総合課税の対象になり、基礎控除など他の所得控除を差し引いた残りに税率が適用されます。
iDeCoの年金は、国民年金や厚生年金といった他の公的年金と合算して控除枠を使う点に注意が必要です。公的年金の受給額がすでに多い人ほど、iDeCoを年金で受け取ることで得られる控除の余地は小さくなりやすくなります。
一時金と年金、どちらを選ぶべきか(モデルケースで比較)

ここまで見てきたとおり、一時金と年金では使える控除の種類が異なるため、一律に「こちらが得」とは言い切れません。退職金の有無や公的年金の見込み額、受け取りたい時期によって有利不利が変わります。
加入期間が長く、受取額が控除内に収まりそうな人
前述のケース1のように、退職所得控除の範囲内に受取額が収まる見込みなら、一時金で受け取ることで税金をゼロに抑えられる可能性があります。会社からの退職金がない、または少ない人ほどこのパターンに当てはまりやすくなります。
公的年金の受給額が少なく、単年の税負担を抑えたい人
公的年金の受給見込み額が少ない人は、iDeCoを年金として受け取っても公的年金等控除の枠を使い切りにくく、雑所得を抑えやすい傾向があります。生活費の補填として毎年少しずつ受け取りたい人にも向いています。
併用でバランスを取りたい人
受取額が大きく、一時金だけでは退職所得控除を超えてしまいそうな場合は、一部を一時金・残りを年金で受け取る併用も選択肢になります。一時金部分で退職所得控除を、年金部分で公的年金等控除を、それぞれ使える可能性があります。
■ ここがポイント
迷ったら、退職金の有無・公的年金の見込み額・受け取りたい時期の3つを整理してから決めると、選択肢を絞り込みやすくなります。
具体的な受取見込み額をイメージしておきたい場合は、複利計算の考え方を押さえておくと将来の資産額を試算しやすくなります。資産運用シミュレーションのやり方はこちら。
受け取り方を決める前に知っておきたい注意点とデメリット

⚠ 注意
75歳までに受給の請求をする必要があります。請求をしないまま75歳を迎えると、資産は法務局に供託され、自由に引き出せなくなります。受け取り忘れには十分注意しましょう。
会社から退職金を受け取る予定がある人は、退職金とiDeCoの一時金を近い時期に受け取ると、退職所得控除の枠を分け合う形で調整計算が入ることがあります。単純に「40万円×加入年数」では計算できないケースがあるため、退職金とiDeCoの受け取り時期が近い人は、事前に税務署や税理士に相談しておくと安心です。
また、iDeCoの加入者等が亡くなった場合には、そのご遺族が死亡一時金を受給できる仕組みもあります。自分自身の受け取り方だけでなく、万一のケースについても頭の片隅に置いておくとよいでしょう。
なお、この記事の税制に関する内容は2026年7月時点の情報です。退職所得控除や公的年金等控除の仕組みは税制改正によって見直される可能性があるため、実際に受け取る際は国税庁や運営管理機関の最新情報を確認してください。
まとめ

この記事のまとめ
- ✓ iDeCoの受け取り方は「一時金」「年金」「併用」の3種類
- ✓ 一時金は退職所得控除、年金は公的年金等控除が使える
- ✓ 有利不利は退職金の有無や公的年金の見込み額次第。迷ったら併用も検討する
iDeCoの受け取り方は、どれか1つが絶対的に正解というものではなく、退職金の有無や公的年金の見込み額、受け取りたいタイミングによって最適解が変わります。まずは自分の公的年金の見込み額を把握し、退職所得控除・公的年金等控除の仕組みを踏まえたうえで、余裕を持って受け取り方を検討してみてください。金額の大きな判断になるため、迷ったときは税理士や運営管理機関の窓口に相談することもおすすめします。
よくある質問
iDeCoの受け取り方には何がありますか?
「一時金」「年金」「併用」の3種類から選べます。どれを選ぶかによって、かかる税金の計算方法が変わってくる点に注意が必要です。
一時金で受け取ると税金はどうなりますか?
一時金で受け取る場合は、退職所得控除という仕組みが適用されます。勤続年数や積立期間に応じて控除額が変わるため、退職金がある人はその金額と合わせて考える必要があります。
一時金と年金、どちらを選べば有利ですか?
有利不利は退職金の有無や公的年金の見込み額によって変わるため、一概にどちらが得とは言えません。モデルケースで比較しながら、自分の状況に近いパターンを参考にし、迷う場合は併用も選択肢に入れて検討することをおすすめします。

