NISA取り崩し方の基本【定率・定額の違いを解説】
NISAで積み立てた資産をいざ取り崩す段階になると、「いくらずつ売ればいいのか」「どの順番で売ればいいのか」と迷う人は少なくありません。特に老後資金としてNISA資産の取り崩し方を考えるときは、積み立てて増やす局面とは違う視点が必要になります。この記事では、定率・定額という代表的な2つの取り崩し方と、売却の順序、非課税枠の扱いについて、一般的な考え方を整理します。
この記事でわかること
- NISAの資産を取り崩すときにまず知っておきたい3つの仕組み
- 「定率取り崩し」と「定額取り崩し」の違いをモデルケースで比較
- 取り崩す順序をどう考えるか(NISA口座と課税口座)
NISAの資産を取り崩すときにまず知っておきたい3つの仕組み

取り崩し方を考える前に、NISA制度そのものの仕組みを押さえておくと判断がしやすくなります。2026年7月時点の新NISA制度では、次の3点が土台になります。
非課税保有期間は無期限
新NISAでは非課税で保有できる期間に制限がありません。そのため「〇年以内に売らないといけない」という縛りはなく、取り崩しの開始時期やペースは自分のライフプランに合わせて自由に決められます。
売却益・分配金は非課税
NISA口座内で保有している商品を売却して得た利益や、受け取る分配金には税金がかかりません。通常の課税口座であれば約20%の税金が引かれるところが、NISA口座ではそのまま受け取れる点が最大の特徴です。
売却した分の非課税枠は翌年に復活する
新NISAは生涯にわたる非課税保有限度額(総枠1,800万円)を「簿価残高方式」で管理しています。保有商品を売却すると、その商品を取得したときの金額(簿価)分の非課税枠が、翌年以降に復活して再利用できる仕組みです。取り崩したからといって非課税枠を永久に失うわけではない、という点は覚えておくと安心です。まだNISA口座を開設していない方は、つみたてNISAの始め方を解説した記事もあわせてご覧ください。
「定率取り崩し」と「定額取り崩し」の違いをモデルケースで比較

資産を取り崩す方法は、大きく分けて「定率取り崩し」と「定額取り崩し」の2つがよく紹介されます。ここでは、資産2,000万円を保有しているケースをモデルケースとして、それぞれの考え方を比較します(以下はあくまで一例の数値であり、実際の運用成果を保証するものではありません)。
定率取り崩しとは
定率取り崩しは、その時点の資産残高に対して一定の割合(例えば4%)を売却する方法です。モデルケースとして資産2,000万円・取り崩し率4%とすると、初年度は2,000万円×4%=80万円を取り崩し、残高は1,920万円になります。翌年はその時点の残高に対して改めて4%を計算するため、相場が上がって残高が増えていれば取り崩し額も増え、相場が下がっていれば取り崩し額も自動的に減るという特徴があります。資産を使い切ってしまうリスクを抑えやすい一方、年によって受け取れる金額が変動する点は考慮が必要です。
定額取り崩しとは
定額取り崩しは、資産の増減にかかわらず毎回同じ金額を売却する方法です。モデルケースとして毎年60万円(月5万円換算)を取り崩すとすると、単純計算では2,000万円÷60万円=約33年分に相当します。ただし実際には運用を続けながら取り崩していくため、相場が上向けばこの年数より長く資産が持つ可能性がありますし、下落が続けば想定より早く目減りする可能性もあります。毎月の生活費として金額が一定であることは家計管理のしやすさにつながります。
■ ここがポイント
海外の資産運用の研究では「4%ルール」と呼ばれる考え方が紹介されることがあります。取り崩し開始時点の資産額の4%程度を毎年取り崩せば、30年程度は資産が枯渇しにくいとされる一つの目安ですが、これはアメリカの株式市場のデータをもとにした研究であり、市場環境や為替の異なる日本のNISA運用にそのまま当てはまる保証はありません。あくまで考え方の一つの参考として捉えるのが無難です。
取り崩しシミュレーションの数字を自分の資産額に当てはめて具体的に確認したい場合は、資産運用シミュレーションも参考になります。
取り崩す順序をどう考えるか(NISA口座と課税口座)

NISA口座と、特定口座などの課税口座の両方に資産がある場合、どちらから取り崩すかも考えどころです。代表的な2つの考え方を紹介します。
課税口座を先に取り崩す考え方
NISA口座は非課税保有期間が無期限で、かつ売却した枠が翌年に復活して再利用できる貴重な仕組みです。この非課税メリットをできるだけ長く活かすために、まず課税口座(特定口座など)から取り崩し、NISA口座はできるだけ長く非課税で運用し続けるという考え方があります。一般的にはこちらの考え方が紹介されることが多い傾向にあります。
NISA口座も並行して取り崩す考え方
一方で、生活費として必要な金額や資産の配分によっては、NISA口座と課税口座の両方から並行して取り崩すという考え方もあります。例えば課税口座の資産が少なく、NISA口座だけで生活費の大部分をまかなう必要がある場合は、無理に課税口座を優先する必要はありません。どちらが正解というよりも、自分の資産構成や取り崩す目的によって選ぶべき順序は変わってくる、という前提で考えるのが実情に近いといえます。
相場が下がっている時期に取り崩しが重なったときの考え方

取り崩しを始めた直後に相場が大きく下落すると、同じ金額を売却するために手放す口数(株数・口数)が増え、その後相場が回復しても資産の減り方が大きくなりやすいという性質があります。これは取り崩しの順序によって結果が左右されることから、一般に「取り崩し順序リスク」と呼ばれることがあります。特にリタイア直後など、まとまった取り崩しを始めた初期の数年間に下落局面が重なると影響を受けやすいとされています。
この性質への向き合い方として、次のような考え方がよく紹介されます。取り崩し開始前から生活費数年分を現金や値動きの穏やかな資産として確保しておき、下落局面ではその現金部分を優先的に使う、あるいは定額ではなく定率に切り替えて取り崩し額そのものを抑える、といった方法です。いずれも「絶対にうまくいく」という保証があるものではなく、個々の資産状況やリスク許容度によって適した対応は異なる点には注意が必要です。
⚠ 注意
この記事で紹介している取り崩し方や順序の考え方は、一般的な情報整理であり、特定の商品の売買や投資判断を推奨するものではありません。取り崩しのペースや順序は、資産状況・収入・家族構成などによって最適解が異なります。実際に判断する際は、ご自身の状況を踏まえたうえで、必要に応じて金融機関や専門家にも相談することをおすすめします。
老後資金として計画的に取り崩すための出口戦略

NISA資産を老後資金として取り崩すときは、NISA単体で考えるのではなく、公的年金など他の収入源とあわせて「毎月いくら必要で、そのうちどこまでを年金でまかなえるか」を把握しておくと計画が立てやすくなります。公的年金の見込み受給額は、毎年届くねんきん定期便の見方を解説した記事で確認方法を整理していますので、こちらもあわせて参考にしてみてください。
年金でまかなえる生活費と、不足する分をNISA資産の取り崩しで補うという役割分担が見えてくると、「毎月どのくらいのペースで取り崩せば資産がどのくらい持ちそうか」というイメージが具体的になります。取り崩しを始める年齢が近づいてきたら、一度に大きな方針を決め切ろうとせず、実際の収支や資産残高を確認しながら、定率・定額の割合や取り崩す口座の順序を必要に応じて見直していく、という柔軟な姿勢で臨むのも一つの考え方です。
まとめ

NISA資産の取り崩し方には、これが唯一の正解というものはありません。定率・定額それぞれの特徴、NISA口座と課税口座のどちらを優先するか、相場下落時にどう備えるかといった論点を踏まえたうえで、自分のライフプランに合わせて考え方を組み立てていくことが大切です。まずは今回紹介した基本の仕組みを押さえたうえで、老後に必要な生活費や公的年金の見込み額と照らし合わせながら、無理のない取り崩しペースを検討してみてください。
この記事のまとめ
- ✓ NISAは非課税保有期間が無期限で、売却した分の非課税枠は翌年に復活して再利用できる
- ✓ 取り崩し方には残高に応じて金額が変わる「定率」と、毎回同じ金額を売る「定額」がある
- ✓ 非課税メリットを長く活かすなら課税口座を先に取り崩す考え方が一般的だが、資産構成次第で最適な順序は変わる
- ✓ 取り崩し初期の下落局面は影響が大きくなりやすいため、生活費の現金確保などの備えが有効とされる
よくある質問
NISAの資産はどうやって取り崩せばいいですか?
代表的な方法として、残高に応じて売却額が変わる「定率取り崩し」と、毎回同じ金額を売る「定額取り崩し」の2つがあります。どちらが向いているかはモデルケースで比較しながら検討する必要があります。
NISA口座と課税口座、どちらから先に取り崩すべきですか?
非課税メリットを長く活かしたい場合は、課税口座を先に取り崩す考え方が一般的です。ただし資産構成によって最適な順序は変わるため、自分の保有状況に応じて判断することが大切です。
相場が下がっているときに取り崩しが重なったらどうすればいいですか?
取り崩しの初期に下落局面が重なると資産への影響が大きくなりやすいとされています。生活費分の現金をあらかじめ確保しておくなど、下落時にも慌てず対応できる備えをしておくことが有効とされています。

